ペレキアンのための旅行案内〜その3 ジョルジュ・ペレック通り

ジョルジュ・ペレック通り

ペール=ラシューズ墓地を抜けて、二十区のジョルジュ・ペレック通りを目指す。この通りの存在はこちらのブログで知った。どうしてペレックなのか、よくわからなかったけどせっかくなので行ってみることにした。

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大統領選の選挙活動やメーデーのデモをひやかしながら歩いて行くと、静かな住宅街にたどり着いた。 ジョルジュ・ペレック通りはポール・ストロース通りからジュール・ジークフリート通りに抜ける、全長38m、幅4mの小さな通りだ。途中、21段の階段がある。



ジョルジュ・ペレック通りを抜けた先のジュール・ジークフリート通りはまさに瀟洒な住宅街そのもの。

ジュール・ジークフリート通り

 

さて、ジョルジュ・ペレック通りについて調べてみるといくつか発見が。ひとつはウリポのサイトで見つけたマルセル・べナブーの「ジョルジュ・ペレック通り」というエッセイ。ざっくり、大意だけ訳してみるとたぶんこんな感じ(だと思う)。

ジョルジュ・ペレック通り

静謐と緑に溢れ、車はほとんどない。

見た目とは裏腹に、ここはパリ西部郊外の高級住宅地ではない。フランスの田舎の静かな村でもない。私たちはまさにパリにいるのだ。交通渋滞とインターチェンジで有名なポルト・ドゥ・バニョレのすぐそばだ。

この地区は前世紀初頭に建てられた一軒家(ざっとみて百件近く)が集まる閑静な住宅街だ。ここに、パリ市役所が「ジョルジュ・ペレック通り」を置くことを決めた。なんとも素晴らしい決定だが、意外な選択でもある。子供の頃の19区ヴィラン通りとの関係を幾度も語った人物、17区サイモン・キュビリエ通り11番地に不朽のマンションを残した作家と、ここ二十区の中央でしようとしていることとは実際のところどんな関係があるのか疑問に思われるだろう。

しかし、ヴィラン通りはこの地区の徹底的な再開発によりメニルモンタンの斜面にのみ込まれてしまい、もう存在しない。サイモン・キュビリエ通りは現代小説の代表作『人生使用法』に登場する架空の通りだ。他を当たらなければならない。

この場所を選んだことはやはり意外だし、奇妙だ。

事実、この地区全体は建築計画の担当者が完成前から付けていた「パリの田舎」という名(もっともな名だ)で知られていた。ところが、周知のことだがペレックは田舎にほとんど興味がなかった(これは曲言法だ)。田舎は馴染みのない地域で、流刑地のように感じると言っていた。

通り自体について言うと、この通りは都市工学的実態−この言葉の一般的な意味でも、そして『さまざまな空間』で「通りとは一般的に長い方の二辺に沿って家屋が連なる空間のことなのだ。通りは家屋を互いに隔てているが、そこを伝って進んだり横断したりして、家から家へと移動することもできる」とペレックが定義している意味でも−とほとんど対応しない。

さて、何が何でもペレックの定義の逆をいこうとしているみたいだが、このいわゆる通りは本当に小さく、階段によって区切られていて、まさにそこを伝って進むことはできない。家から家へと移動することは、戸口が通りに面した家は一軒しかないので、それも難しい。 番地がついているのはその家だけなのだが、なぜか13番地になっている。ペレックがこだわったことで知られている数字、11ではないのだ…

この場所を選んだ背景には、ペレックのウリポ的作品(最長のリポグラム、最長の回文等々)の特徴である新記録達成の意欲へのオマージュがあったのではないか、と思った。この新記録愛好家と、記録的な通りを結びつけようとしたのではないか。

しかし、確認してみるとこの説明も破綻する。なぜなら、見た目とは裏腹にジョルジュ・ペレック通りは記録を更新していない。全長38mのペレック通りはパリで一番短い通りではない。デグレ通りに完全に負けている。友人のジャック・ジュエに教えてもらったところ5,75mしかない。一番狭い通りでもない。ペレック通りは幅4mだが、シャ(猫)通りではわずか1.8m幅の範囲で魚を獲るしかない。

結局、私は特異性という仮説しか思いつかなかった。特異性により知られた作家には、特異性により知られた通りがふさわしい。いろいろな意味でユニークな作家は、いろいろな意味でユニークな通りが必要だ。

そろそろ、この仮説で満足しなければならないだろう。あなたならどう考えるだろうか。

同じ言い回しがなんどか続いたり、どこかひっかかるところがあるのでこれは何か奇っ怪な言語遊戯かな?と思ったけれど、結局よくわからない。

もう一つは、NAMという人の「ジョルジュ・ペレック通りのうた」。



閑静な住宅街にあるのどかな通りの雰囲気にはまったく似合わないけれど、なんだかカッコいいぞ。ちょっと調べてみたけれど、この歌手のことはよくわからない。わからないことだらけだ。

 

※2012年8月14日追記

youtubeで「ウリポ(パリの)通りを走る」L’Oulipo court les rues(de Paris)という映像作品を見つけた。



1分35秒から、マルセル・べナブーがジョルジュ・ペレック通りで、『さまざまな空間』での通りの定義、13番地の話をしている。


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